他人の空似

創作小話やネタなどをだらだらと。

CCC!!/Cat and Crow with Corpse⑥

 

 明日君の夢を見る。

 

 風呂から上げるとリビングテーブルの椅子に伊波が座っていた。

 テレビはつけっぱなしで、今日のニュースが取り上げられていた。隣の市で女性の刺殺体が発見されたというニュースだった。画面にはブルーシートで囲まれた路地に関係者が出入りを繰り返している映像が流れている。

「この人、このマンションに住んでる人だよ」

 画面には身元不明と書かれている。

「駐車場に車停まってないし、さっき旦那さんが警察に電話してたわ。服装も、今朝出かけた時のと同じだった」

「おまえ、いつの間に」

「……早くご飯食べなよ」

 テーブルの上には朝の予告通りに肉料理、豚肉の生姜焼きと肉豆腐、海鮮サラダが置かれている。どれもおいしそうな匂いを出している。白米とみそ汁は自分でよそうスタイルなのでこの場にはない。

「いただきます」

 自分で炊飯器からご飯を盛り、みそ汁は具はシメジで、それも自分でやる。席について時計を見れば11時を過ぎている。ずいぶん遅い夕食だが、一人でいたころはカップラーメンにしていたし、疲れていた時は何も食べずに寝ていた。

「おいしい」

 生姜焼きを一口運べば下の上に味が染みわたる。昼食以降何も食べていなかったからか、なおさらおいしく感じた。自然とおいしいと感想が出たが、伊波は無反応だった。

 彼女はテーブルに肘を乗せ頬杖をつきながらまだテレビを見ている。

「あっ……」

 ファンファンと速報を知らせる音が鳴るとテレビの画面上部には字幕が表示される。

《―――市内における女性刺殺事件において被害者の身元判明》

《女性は同県ーーー市在住 瀬川舞子さん(34)と判明》

 そのあと、再度字幕は同じ内容を流すと終了した。

「本当だったのか」

「嘘だと思ったのか」

 そういうわけじゃないと言おうとしたが、目に見えて不機嫌になった彼女を見て肩を竦めるだけにしておく。彼女は字幕を読むことはできなかったようだが、俺の発言からさっきのニュースのことだと思ったのだろう。

「で、聴きたいことがあるんだが」

 彼女は何も言わない。単に続けろという意思表示なのかもしれない。

「昼間、会社に“105番”っていうやつが来たんだ。お前に顔がそっくりで声も似てた。そいつはお前に聞けばわかるって言ってた……誰なんだ?」

「……顔がそっくりなんじゃなくて、同じなんだよ」

「は?」

「“105番”は個体番号。私たちは同じ人間なんだよ」

 それから聞いたことは信じられない事だった。

 伊波はクローン人間で、“105番”も同じクローン人間。ただ育て方が違うだけの同じ人間らしい。DNAも指紋、声紋もほとんどが同じ。食の好みや、正確に違いはあれど肉体的な違いはほとんど持ち合わせていないらしい。

 あまりにも非現実的なことで箸が止まる。

「105番ってことはお前は……」

「私は173番」

「全員で何人いるんだ?」

「……結構たくさんいる。知ってるだけで200人かな」

「そんなにいるのか」

「まあ、クローンだからね。全部コピペみたいな感じで作れるよ。てか、本当にいいのか?」

「なにが?」

「私を追い出さなくていいのかってこと。絶対面倒ごとに巻き込まれるよ。てか、もう巻き込んでるか」

 確かに最初はそう考えていたが、もう無駄だろう。

「俺のところに直に来たってことは職場も俺の行動もバレてるんじゃないか?」

「それも、そうだね……」

「じゃあ、ここにいて何か起こった時に助けてくれればそれでいいよ」

 何かあるにしろ、ここで伊波に離れられると困る。何かあった時に対抗できない。それに、食事のことに関してもそうだ。一度上げた生活レベルを下げることはできない。

 残った夕飯を食べるがもう冷めていた。

 まあ、おいしいことに変わりはないので食べ続ける。

 

「ありがとね」