他人の空似

創作小話やネタなどをだらだらと。

CCC!!/Cat and Crow with Corpse⑤

 

 好きだよ、嫌いだよ、どうでもいいよ。

 

「ただいま」

 慣れたように言えるようになった言葉を言う。時刻は10時過ぎ、伊波はまだ起きていた。料理の残り香と、バラエティ番組の声が聞こえる。

「お帰り」

 伊波は表情金一つ動かすことなく言い放つと俺から上弁当箱をひったくる。慣れたように台所へと行くと洗い始めた。

「ご飯は温めるから、先に風呂入ってきて」

「ああ」

 何も変わったことはない。普通にいつも通りだ。俺はいつ昼間の奴“105番”について聞こうか迷ったが、疲れからか脳みそが回らなくなっていた。

 風呂とメシが終わってから聞くことにしよう……。

「何かあったの?」

「……え?」

 伊波のことを見ると、彼女はこちらのこと見据えていた。

「普段と様子が違う。上司に何か言われたの?」

「いや、そういうわけじゃないけど」

「同僚か?」

「違う」

 彼女の目線が段々ときつくなる。俺はどう言おうか迷っていた。会社でお前に似た奴にあった、と言うにしても絶対面倒ごとだ。俺には彼女の厄介ごとに関わる気はなかった。

「誰かが私を探していたの?」

 彼女は洗い物を中断し、リビングまで来た。真っ直ぐに俺を見据えると彼女は溜め息一つをこぼした。

「何か危害を加えられた?」

「いや、そういうことはされなかった。ただお前のことを知っている奴っぽくて」

  “105番”って誰だ?そう言うと目に見えて伊波の表情が変わった。

「……もう遅い、さっさと風呂に入れ」

「は?おい、それはないだろ」

「ちゃんと話すから、早くして」

 そういうと、伊波は台所へと戻って行ってしまった。

「何なんだよ……」

 これ以上は話してくれなさそうなので、俺は着替えを取りに自室へと戻った。

 部屋はカーテンが閉め切ったままで真っ暗だ。灯りをつけ、タンスから着替えを取り出す。プライバシーを守るため、最初の取り決めで伊波はこの部屋には入ってこない。もしかしたら俺のいない間に入っているかも知れないが、タンスの上に溜まったホコリや畳まれていない布団を見るに、律儀に守っているのだろう。

「そろそろ、掃除しないとな……」

 現実逃避だ。仕事で疲れるのはいつものことだが、家の中にまで持ち込まれるのはごめんだ。これなら同棲を持ちかけられた時に断っていれば良かったとさえ思う。(元は面倒な家事や料理をしてくれる事につられて了承したのはこの際棚に上げるが……)

 もしかしたら、出て行ってもらうかもしれない。その考えが頭を過るが直ぐに頭を振る。

 もしかしたら生き別れた姉妹とかの説がある。伊波が本名を話さないのは家出してきたのかもしれないし、俺に会ってきたのは探偵とかに調べさせて居場所を知ったのかもしれない。

 俺は働かない頭を使っては要らぬ予想ばかりを立てていた。