他人の空似

創作小話やネタなどをだらだらと。

CCC!!/Crash and Crisis in the City②

 

 必要とされることはあるが、求められることはない人生。

 

 女は自分のことを蓬生花楓と名乗った。癖のある長い黒髪にたおやかな見た目。だが、浮かべる笑顔は胡散臭い。

「何の用?私これから用事があるんだけど」

「そんなに警戒しないでください。争いに来たわけではありませんから」

 女は両手を広げて無害さをアピールするが信用できない。立ち振る舞いは無害そうだが、ほのかに感じる気配は強者だった。間違いなく自分より強い。この場で相手が本気を出せば高確率で自分は死ぬ。

「いまいち信用してくれないようですね」

「悪いけど、初対面の相手を信じれるほど恵まれた環境じゃ無かったんでね」

「……それもそうですね」

 冗談交じりに言えば、女は引き下がる。

「それで、一体何の用?」

「実は、貴女に依頼をしたいのです」

「依頼?」

 女はそう言うと手持ちのバックからUSBメモリを取り出す。

「必要なことはここに入っています。これは、是非とも貴女に受けていただきたい」

 女はメモリを投げよこす。何の変哲もないが、私はそれを更に投げ返した。

「どういうつもりです?」

「悪いけど今は依頼を受け付けてないし、面倒ごとはごめんだよ」

「報酬は高く弾みますが?」

「それでもよ。もう危ないことからは手を引いたんだ。今更戻るつもりはないよ」

「そうでしたか……」

 女は見るからに残念そうにすると返されたメモリをバックにしまう。

「貴女は実に優秀な方なので、残念です」

「期待に添えられずすみませんね」

「いえいえ、此方も突然お伺いしてご迷惑をおかけしました。もし、何かあればこちらに連絡を」

 床に置いたのは小さな紙片。おそらく名刺だろう。そのまま、女は来た時と同じように非常階段から降りていく。振動が感じられなくなると警戒しながら名刺を拾う。

 名刺自体には何も仕掛けは施されていない。名前と所属、電話番号が書かれている。

「K.T社?秘書課……?蓬生花楓、ねぇ」

 K.T社は聞いたことはあるが、なぜそんな会社の人間が自分を訪ねるのかがわからない。仄暗い噂は聞いたことはないし、繋がりがあるようには思えない。それに、あんなに強い女がいるような会社だとも思えない。

 名刺を財布にしまえば、ドタドタと階段を上る音が聞こえる。やっとか……。

「ごめん、遅れた!!」

「遅れすぎだバカヤロー」

 息を切らせながら来た男はこちらに歩み寄るとどうしたのかと聞いてきた。

「ここに来る前に変な奴いなかったか?」

「いや、全然」

 男は不思議そうな顔をするが、あの女とすれ違っていないのなら僥倖。顔がバレるのが一番危ない。

「遅れてたからカツアゲされてるのかと思った」

「ひっでぇ......」

 後ろでぎゃいぎゃい騒ぐ男を放って夜の街を見下ろす。

 相も変わらず騒がしいここは着実に動こうとしている。